片付けのヒント– 過ごしやすい空間を作るコツ –

1.犬と暮らす家の「片付けに関する」よくある問題点

犬との暮らしは、毎日がにぎやかで楽しい反面、家の中が“常に戦場”のようになることもしばしば。特に好奇心旺盛な子や、まだ若いわんちゃんがいる家庭では、「片付けても片付けても…!」とため息が出てしまうこともありますよね。
たとえばこんな“あるある”、思い当たりませんか?
ダイニングテーブルに置いておいた料理が、目を離したすきに床へ落下…すでに半分食べられている
新聞紙やチラシをちょっとソファに置いたままにしていたら、見るも無残な紙吹雪状態
おやつの包装ゴミを一時的にカウンターに置いていたら、気づいた時にはビリビリにされていた
低い棚や床置きのかご収納から、おもちゃや靴下が運び出されている
お客様用のスリッパが気づいたら“わんこのおもちゃ”になっている
どれも犬にとっては「遊び」や「においへの興味」でやってしまうこと。でも私たちにとっては、「片付けが終わらない」「やる気がそがれる」原因になりやすいものです。
特に共働き家庭や育児中の方は、限られた時間の中で家を整えようとしても、犬のイタズラや持ち出し行動で再び散らかる…という悪循環に。
すると、物の定位置が曖昧になり、「とりあえず置く」が常態化して、ますます片付かなくなるというスパイラルに陥ってしまいます。
ですが、こうした“犬との暮らしならではの片付けの悩み”は、ちょっとしたレイアウトの工夫や収納ルールの見直しでグッと減らせるのです。
次の章では、実際にどんな工夫をすればいいのか、プロの視点から具体的に紹介していきます。

2. イタズラされにくい収納と動線の工夫

犬との暮らしで“片付けにくさ”を感じる場面の多くは、「わんこ目線」を想定していないレイアウトや収納配置が原因になっていることがあります。

犬は、視線が低く、嗅覚が鋭く、好奇心で動く生き物。
つまり、低い位置にあって匂いのするもの=ターゲットになりやすいのです。
この前提をふまえて、イタズラされにくい収納や動線の工夫を見ていきましょう。


● ① 床に“物の定位置”をつくらない

床や低い位置に置いてあるカゴ収納、新聞・雑誌の束、食べかけのお菓子などは、犬からすれば「ごちそう」か「遊び道具」に見えてしまいます。
一時的に置くつもりのものでも、わんこにとってはその瞬間が“チャンス”。

床やローテーブルには基本的に物を置かない習慣をつけましょう。
一時的に物を置く際は、後述する「仮置き場」を活用するのが安心です。


● ② 「鼻が届かない高さ」を基準に収納

犬種にもよりますが、多くの犬が3段ボックスの1段目(約30cm前後)までは簡単に鼻や前足が届きます。
おやつ・ゴミ・料理・ティッシュなどのイタズラされやすい物は、犬の鼻が届かない位置(目安:腰の高さ以上)に収納しましょう。

オープン棚やラックを使う場合も、**下段には「見られてもOK、取られてもOKなもの」**を。逆に貴重品や壊されると困るものは、必ず扉付きの収納や引き出しへ。


● ③ キッチン・ダイニングの動線を「仕切る」

料理中や食事中にキッチンやテーブル周りに来られて困る場合は、簡易的な仕切りやペットゲートの導入が有効です。
特にキッチンは危険が多いため、「料理中は入れない」「テーブル下には入らせない」などのルールをつくっておくと安心です。

インテリアの雰囲気を損なわない、木製やアイアン素材のスタイリッシュなペットゲートも市販されています。部屋の雰囲気に合わせて選ぶと、違和感なく使えます。


● ④ “犬のための収納”を作っておく

逆説的ですが、「わんこのための定位置収納」を作っておくと、イタズラが減ることがあります。
おもちゃ・おやつ・ブラッシング道具など、犬が興味を持ちやすい物は、あえて“犬専用コーナー”をつくって収納することで、興味を他の場所に向けにくくなります。

また、片付けを習慣化したい方は、「おもちゃ箱から出したものはここに戻す」という簡単なトレーニングを取り入れてみるのもおすすめです(これは知育にも◎)。


こうした工夫をベースにしたレイアウトや収納の見直しで、犬のイタズラを“未然に防ぐ”ことができ、結果として家全体が片付けやすくなります。

次章では、紙類や食器など「よく狙われる物」をどう扱えばいいのか?
一時仮置きのテクニックを交えてご紹介します。


3. 紙類・食器・料理などの一時仮置きテク

犬との暮らしで特に困るのが、「ちょっと置いたはずの物が…ない!」という“すき間時間イタズラ”。
新聞やチラシ、食器やお菓子の袋など、一時的に置いたものほど狙われやすいのが犬との暮らしの難しさです。

だからこそ、片付けの視点では「仮置き場の設計」が非常に重要になります。


● ① キッチンやダイニング横に「一時退避スペース」を作る

たとえば料理中、「ちょっとお皿を置きたい」「できあがった料理を仮置きしたい」というとき、ダイニングテーブルに直接置いてしまうとイタズラのリスクが高まります

おすすめは、腰高程度のサイドカウンターやスリムラックを活用した“退避スペース”の設置
動線を邪魔しない範囲で壁際に置くことで、調理中も一時的に安全にモノを置くことができます。

▼おすすめアイテム例:

  • スリムタイプのキッチンワゴン(キャスター付きなら移動も楽)
  • 高さ90cm程度のカラーボックス+天板アレンジで簡易カウンターに
  • 折りたたみ式の壁付け棚(使わない時は収納可能)

● ② 新聞・チラシ・紙類は「手が届かない“紙ステーション”」に

紙類は犬にとって最高のおもちゃ。カサカサ音・噛み心地・持ち運びやすさ、全部そろってます。
だからこそ、紙の一時置き場は**「出しっぱなしNG」「手の届かない収納を使う」**のが鉄則です。

▼工夫例:

  • 壁付けのマガジンラック(高さを出す)
  • 扉付きのキャビネットに「未読・資源ごみ行き」で仕分けトレーを設置
  • 宅配物の一時置きは“フタ付きボックス”に入れる

「ついソファに置きがち」という人は、ルールを固定して収納をセット化するのが片付け収納士としてのおすすめ方法です。


● ③ ゴミの“仮捨て”も徹底管理

食べ終わったスナックの袋、ウェットティッシュのごみ、子どものお菓子の包み紙…。
これらも“油断した一瞬”が命取り。ゴミ箱まで持っていく余裕がないときに便利なのが、仮捨てボックスです。

▼ポイント:

  • フタ付き(におい・中身の視覚刺激を防ぐ)
  • わんこの背丈以上の場所に設置(カウンターや冷蔵庫の上など)
  • 中身を毎日見直す習慣もセットに

※紙袋などを仮ゴミ箱代わりにすると中身が見えやすく、狙われがちなので注意!


● ④ “とりあえず置き”は、場所を決めれば防げる

忙しい毎日の中で、「今は片付けられないけど、とりあえず置きたい」――この感情は自然なこと。
でも「どこにでも置ける」状態は、わんこのイタズラを招くだけでなく、家の散らかりも加速します。

だからこそ、“とりあえず”置く場所を、あらかじめ1〜2か所に限定することが重要です。
たとえば、玄関横の棚の上や冷蔵庫上など、手が届きにくく生活動線の邪魔にならない場所を、家族全員で共通認識にしておくとスムーズです。


仮置き場を“見える化”して、使いやすく整理することで、「置いたはずが…」のストレスを大幅に減らせます。
次章では、実際に役立つ収納グッズや配置例を紹介していきます。


4. おすすめの収納グッズと配置例

犬と暮らす家では、「高くて安全」「扉付きで見えにくい」「簡単に戻せる」――この3つのポイントを押さえた収納グッズ選びがカギになります。

ここでは、片付け収納士としておすすめする具体的な収納グッズと、実際の活用シーン別に役立つ配置例をご紹介します。


● 食べ物・食器関連:扉付きキャビネット+ワゴンの組み合わせ

【おすすめグッズ】

  • 扉付きキッチンキャビネット(腰高〜目線程度)
  • スリムワゴン(キッチン横・ダイニング横に設置)

【配置例】
調理中に使う調味料や器具類は、キャビネットに定位置を設けて収納。ワゴンには仮置きしたいお皿やラップ済みの料理を一時的に避難。
ワゴンがあることで、「とりあえずテーブルに置く→犬がジャンプ」のパターンを防げます。


● 新聞・チラシ・子どものプリント:壁付けマガジンラック+仕分けファイル

【おすすめグッズ】

  • 壁掛けマガジンラック(高さ90cm以上)
  • ラベル付きのA4縦型ファイルボックス

【配置例】
リビングやダイニングの壁面を使って、紙類専用の“紙ステーション”を設置
新聞・未読のチラシ・学校からのプリントなどを、家族ごとに分類できるとよりスッキリします。
犬の目線より高い位置にあることで、紙類のビリビリ被害が激減!


● 犬用品(おもちゃ・お手入れ道具・おやつ):カラーボックス+収納ボックス

【おすすめグッズ】

  • 3段カラーボックス(横置き推奨)
  • 中に収まるフタ付き布ボックス or プラスチックボックス

【配置例】
1段目をわんこ専用コーナーにして、**出し入れ自由な「マイおもちゃ箱」**として活用。
2・3段目にはリードやおやつ、お手入れ道具を分類収納。
散歩の準備や片付けがスムーズになるだけでなく、わんこ自身の“お片付け習慣”を作ることもできます。


● ゴミの仮捨て・小物置き:フタ付きバスケット+カウンター上設置

【おすすめグッズ】

  • 蓋つきバスケット(シーグラスやラタン素材など、インテリアにも馴染むもの)
  • 冷蔵庫上やカウンター上のスペース

【配置例】
すぐには捨てられないゴミや小物類は、視線と匂いを遮る蓋付きバスケットに一時保管
高さがある場所に設置することで、犬がジャンプして届くリスクを回避できます。


● 子どもの持ち物・学用品:“子どもゾーン”と“犬立ち入り不可ゾーン”を分ける

【おすすめ】

  • ランドセルラック(高さあり+扉付き)
  • わんこの届かない位置に“学校グッズ定位置”を設定

【配置例】
犬が入りにくい部屋(例:子ども部屋や寝室)に、学用品・文房具などの定位置をまとめるのがおすすめ。
「ダイニングで宿題→プリントがビリビリ」なんてことを防ぐためにも、学習環境と犬の生活空間はゆるくゾーニングすると安心です。


収納は、“隠す”だけでなく“戻しやすいこと”が何より大事。
犬にとって届かず、家族にとって動きやすい――そんな収納と配置を目指すことで、無理なく整った暮らしが実現できます。5. まとめ:犬と暮らす家は“完璧”より“工夫”を味方に

犬との暮らしは、想定外のことが日常茶飯事。
片付けたはずのものが狙われたり、置いたつもりの場所がイタズラされたり…。
「もう、なんでこうなるの?」とついイライラしてしまうこともありますよね。

でも実は、わんこは悪気があってやっているわけではありません。
彼らにとっては「気になる匂いがした」「面白そうな形だった」「ちょっと口に入れてみたかった」――ただそれだけ。

だからこそ私たち人間の側が、“わんこ目線”で暮らしを整えるという工夫がとても大切になってきます。


大事なのは「犬に優しく、人にもラク」な収納動線

今回ご紹介した内容は、どれも特別なことではありません。
でも、ちょっとした高さの調整、ちょっとした定位置の見直しだけで、犬のイタズラは減らすことができ、結果として「家が片付いて見える」ようになります。

収納のポイントは:

  • 犬の鼻・視線の高さを意識する
  • “仮置き”の習慣を整える
  • 見せる・隠すのバランスをとる

完璧に片付いたモデルルームのような家を目指す必要はありません。
「ここだけは安全」「ここに置けば安心」という“ちょっとラクできる”場所を家の中に増やしていくことこそ、長く続く片付けのコツです。


「できない」を責めず、「うまくいく方法」を探す

片付けのプロとして大事にしているのは、暮らし方に正解はないということ。
大切なのは「自分たち家族が、快適に過ごせる仕組みになっているか」です。

わんこにとっても、家族にとってもストレスの少ない収納をつくること。
そして「困った!」を減らしながら、「できた!」を少しずつ増やしていくこと。

それが、犬と暮らす家で“無理なく片付く”仕組みづくりの第一歩です。


▶ 最後に…

今回ご紹介した収納のヒントは、犬と人が心地よく暮らすためのほんのスタートライン
ライフスタイルや犬種によっても最適な収納方法は変わりますので、ぜひご自身の暮らしに合った工夫を見つけてみてください。

「ここをどう片付けたらいいの?」「うちの犬の場合はどうすれば?」など、気になることがあれば、いつでもご相談くださいね。

犬との暮らしが、もっと自由で、もっと楽しくなりますように。